
いよいよ2010年も本格的に動き始めておりますが、ブロガーも音楽ファンも、何をどう書いていいのか、ますますわかりづらくなっているようです。UKを拠点に活動するディージェイのMoscaも、状況は同じのようです。ガーディアンのDan Hancoxいわく、彼の音楽には「グローバルなハウス・ミュージック、ジャマイカ直送の身を震わすようなダブのエコー、ラテン・パーカッションなどの多彩な要素を含みつつ、それでいてなお、まごうことなきUK、とでもいえそうな圧倒的存在感がある」とのことですが、私は、Moscaが、Night Slugsレーベルからのデビュー作『Square One EP』で作り上げたハイブリッド・サウンドが、正確にはどういったものを含んでいるのか、正直いまでもちょっと、はかりかねています。そんなMoscaをつかまえて、Gmailのチャットで色々と話を聞くことができました。「エスノ・テクノ」のこと、色々な問いに対するヒントや助言、海賊ラジオの未来について、などなど、以下ご一読ください。
聞き手はBrendan Arnott、質問は太字。
Mixpak: 多くの人々が、新レーベルNight Slugsからのデビュー・リリースによって、あなたの存在に気付き始めていますね。このリリースの前は、何をしていたのですか?このような「ジャンルの壁を壊す」ような音楽を作るキッカケは、何だったのでしょうか?
Mosca: 一年くらい前に、Tempzの「Next Hype」のリミックスをやったんだ。特に理由はないんだけど、バルチモアにUKファンキーのストリングスを配したようなものだった。それを自分のブログにあげて、Rinse.FMや、他のいくつかの場所でかけた。そうしたらKry Wolfっていう連中がコンタクトしてきて、彼らの初期の曲のひとつをB-moreにリミックスしてもらえないかって、言ってきたんだ。Sounds of Sumoっていう、彼らの新レーベルのリリースだったかな。それが「Mucky」っていう曲で、自分にとってのデビュー曲になった。オリジナルのプロダクションではないけどね。
そうするとクラブでDJとして活動するようになる前にプロデューサーとしてスタートしたと?
そのとおりだね。15才くらいのときにドラム・マシーンを使って、制作を始めたんだ。Unknown Souljaと同じバンドにいた。ドラマーがいなかったので、ドラム・マシーンを手に入れたんだ。で、ジャングルやらヒップホップやら、エクスペリメンタルなものを作り始めた。DJは、大学に入ってからかな。5年くらい前だね。当初、制作は、より多くのブッキングを得るためにやっていたような感じだった。
あなたの初期のサウンドはジャングルとかヒップホップの影響があって、それは現在のEPを聞いてもなるほど、って思いますが、人によって言うことがバラバラというか、「グローバル・ハウス」だっていう人もいれば、「ジャンルの壁を壊したUKのクロスオーバー・ニュースクールだ」という人もいますね。ご自身のサウンドは、一体どういう種類のものなのでしょうか。こんな質問に対して、もう説明し飽きたよ、という感じかもしれませんが。
確かにね!でも実際それは自分のせいというか。もともと、たくさんの違う種類のものを演奏するのが好きなんだ。だからプロデュースするときも、全部入れてしまいたくなるんだよね。バンドでトリップホップっぽいことやってたときもあったよ。そんな感じだから、いまみたいな音…メランコリーというか、どう呼んでもかまわないけど、そういうふうになったのかな。
ですよね。『Square One EP』を聞いていて驚いたんですが、ダビーなダンスホールのボーカルも後ろで鳴っていたりするじゃないですか。あれはよかったです。
ダブはずいぶん昔から好きでね。レコード屋で£4とかで買えちゃったりするじゃない。まだダウンロードとか全然できなかった時代からさ。ダンスホールのイベントも超大好き。みんなそうだったと思うけど。
このEPもそうですけど、Night Slugsのクルーはみんな、新しいサウンドをクラブに持ち込もうとしていると思います。こういった音が、いよいよブレイクしそうな感じなんですかね。あなた自身はアンダーグラウンドなところにとどまり続けたいとか思ったりしますか?
「サウンド」っていうのが何かにもよるよね。僕自身は、たとえば Bok Bokみたいなアーティストと同じ音を出しているとは思わない。でも、そういう音が成長していくのは、見てみたいよね。昨夜Fabricでプレイしたんだけど、それは僕自身にとって大きなステップアップだった。大変だったよ。でもだからといってこの先、自分がトップ40に入ったりするようなアーティストになるとは、考えられないかなぁ…とかって、言ってもだいじょうぶだよね?
Fabricに関して何か面白いストーリーがあるとか、ツイッターでつぶやいていたそうじゃないですか。
ハハハ、そうだね。ツイッターとフェイスブックのメッセージで、冗談できいてみたんだ。僕がドラムンベース持ってるか、ブースに聞きにきて、ってね。そうしたら本当にひとり、来たんだよ。面白かったね。ポストを読んでくれたのかな、ってね。実際はどうだったかわからないけど!もし読んでなかったら、それはそれでとんでもないことだけど。
Fabricのステータスを持ったアーティストになったということで、もしかしたらもう、リクエストしにきた人々を笑顔でいなせるような立場なのでは?
うーん、そこらへんは謙虚にいきたいよね。それがカギだと思うんだ。そうしないと、みんな遠ざかって行ってしまうから。でもさっきのサウンドの話に戻るけど、ポスト・ファンキーっていうかさ、明らかにUK産のものなんだっていうのはわかるんだけど、実際のところは、何なんだろうね。ハウスもこれだけグローバルになってくると、なんだかジャンル分けもばかばかしいというか。クドゥロとか、剥き出しのハウス、って感じのも出てきてるし。サウンドの国際化ってあるよね。フランスのリヨンの友人でDousterってヤツがいるんだけど、彼とかまさにそんな感じ…。
ちょうどいい具合に次の質問につながりました。『Guardian』がちょうどそういうのを記事にしたんですよね。彼らが言うところの「エスノ・テクノ」というヤツで、ちょっと揶揄するような感じでもあるのですが。とりあえずMatias Aguayoがそれについて応えていて、「自分には、そういう種類の音楽が全然フリーに思えない」と。「コンガをちょっと加えて、ラティーノ風なボーカルを入れただけのサウンドから、他の文化から何かを学ぼうという意思は感じられない」のではないかと。それについてはどう思われますか?
彼は的を得ていると思うね。自分は、広い意味で音楽をとらえる人が好き。確かに、彼が言うように、そういう浅薄なサウンドはフリーとは言えない。でもそれを言ったら、イースト・ロンドンでチノグライム作ってる連中とかも、決してフリーではないよね。彼は「第三世界」の個々人をバックアップできなくとも、最低限、西洋社会全部を我慢して受け入れるほうを選んだんじゃないかな。
チノグライムってなんですか?
(という私の質問に対して、Moscaはこのリンクや、このリンクを示してくれました)
基本的には、こういう中国風のサンプリングを使ったグライムのことをいうんだ。ここには中国人はだれもいないんだけどね…って待てよ、Mr. Wongが実際にはいるか。彼はどうしたのかな?ともあれ、プリセットのコンガだけでどうこうしようなんてのは、どうかと思うということ。音楽の歴史や伝統をきちんとリスペクトしている人が好きだね。でも最終的には、誰が何をやってもいいのかもしれないけどね。クドゥロやバイレファンキが「西洋文化」を搾取できるなら、逆もアリだろう?的な。ちょっと確信犯的な気もするけど。
DousterってGucci Maneのリミックスやってるんですよね…可能性は際限ないですね。
彼(Douster)はいい友人なんだ。ニュー・イヤーのパーティーでも見たんだけどさ。ZZK Recordsから作品を出している。いわゆるプロパーな「ワールド・ミュージック」の世界(伝統的なクンビアとか)でリスペクトされているレーベルだね。面白いよね。
EPではたくさんのリミックスをしてもらっていますよね(GreenaやJulio Bashmore、Bok Bok、L-Vis 1990など) – どのリミックスが一番のサプライズでしたか?
Bok Bokかな。文句なしに。
「自分の作った曲がこんな風に聞こえるなんて、すごい」という思いをしたのはありますか。
もちろん。Roskaとか。完全にRoskaでしかない、という。でもそんなに驚きではなかった。それよりホントBok Bokだよね。度が過ぎているというか。
Ustreamのおかげでショウの現場に行けない人にも「DJライヴ」の感覚を体験してもらえるようになってきていると思います。アーティストにとって、ライヴをオンラインで届けられるようになるというのは、いい方向に働くと思いますか?新しい海賊ラジオのようにも感じますが。
なかには荒らし目的でチャットに入ってくる人もいるみたいだけど、基本的にはとても好きだよ。確かに、海賊ラジオっぽいよね。自分のホームでしか表現できないようなリラックスした雰囲気がいいと思う。
告知も極めて限定的ですよね。自分のツイッターで「MOSCAのUstreamライヴ、なう!」的な。
「手を休めて画面に注目!」ってね。ちょっと限定的過ぎる気もするけどね。ツイッターでフォローしてる人だけが見るチャンスがあるという。
EPのあと、2010年はどんな感じになりそう?
ますは「Gold Bricks, I See You」がFabricのサブ・レーベルであるElevator Musicのコンピレーションに収録されて、これが18日に出るんだ。そのあと、いくつかのリリースの話をしているところ。でも僕は本当にスロウでね。ガバみたいなチョップド&スクリュードもやっているんだけど、とにかく、まずはレコードのために時間を作りたいよね。本当に時間がかかるんだよ。血と涙と汗を注入して作って、半分を削除して、また全体を変えて、みたいな試行錯誤を繰り返しながらなんでね。信じられないかもしれないけど、「Nike」なんて完成まで7か月もかかったんだよ。
で、ボツ・バージョンを「V.I.P. Dub」として8か月後に出すとか?
ハハハ。このあとはR1 Rydersと仕事することになっている。あとは、シングルを出してクラブ営業かな。アルバムに関しては、あまり深く考えないようにしよう。みんな、僕のスタイルは、アルバムに向いてるっていうんだけどね。
アルバムを出すっていうのは、もはや「自然の流れ」ではないっぽいですよね。.
そうだね。だから2010年は、いくつかのコラボ、リミックス、あと願わくばもう少し作業を早く、ってところだね。
最後の質問です。禁断の楽しみを3つ、あげるとしたら。
イヤホンで耳掃除をするのが大好きなんだ。耳の中にパッドを押し込んでね。でも明らかにこれはよくないよね。耳にダメージを与える以外の何物でもないし。
そうですよ。耳垢がどんどん奥のほうに詰まっちゃいますよ。危険ですねぇ。
でも今でも時々、ついやっちゃうんだよ。止めようと努力してるんだけどね。それ以外は、禁断の、っていうほどのものは、ないかなぁ。基本的には、やっていいことしかやらないよ!
どうもありがとうございました。
『Square One EP』(NS001)は2010年1月25日発売、最寄りのMP3ストアでお求めいただけます。限定12″も同時期発売。8曲入りのデジタルEPのタイトル曲はもちろん、2009年にすでにダブプレート・アンセムとなってUK中のクラブをジャンルを超えて席巻しているアノ曲です。B面は10分にも及ぶ長尺の「Nike」で、これまたマスターピース: Boomkatにてお求めいただけます!
翻訳:KNAK28.
タグ: Bok Bok, Douster, Fabric, Mosca, Night Slugs, Roska, sinogrime
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